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えいぞうのし

栄蔵の死

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 38,295 字 · 77 页

青空文庫

と戯談にしてしまっては責任を逃れて居た。

隠居は、川窪がそう金の事などにがみがみしない家なのを幸にして、いずれ返さずばなるまい位に思って居るので、あまり張のない栄蔵のかけ合位ではさほど急いた気持にもならず、夜話しに息子と三十分ばかり相談する位の事で、これぞと云う方針などは立ててもなかった。

若主人が家に一切の事をする様になってあまりしらなかった内幕に立ち入って見ると、父親の名で小千の金が借りてある。

相手が悪いものではないので幾分安心はした様なものの、こんなものまで自分について居てはやりきれないと云う様に、どうしてこいだけ借りたのだと根掘り葉掘り問いただした。

裁判官にきかれる様な気持になりながら栄蔵は、急に入用になった事業上の金と、東京に月に二度ずつ出て居るうちに出来た下らない引っ張りの女の始末をつけるために借りた事を云って仕舞った。

そんな訳なので、息子の云い出さないうちは此方からその事を云い出すのも何と云う事はなしてれ気味なので、余計ずるずるになるばかりであった。

四五度足労をして、もう隠居に話しても仕様がないと思った栄蔵は、若主人に、細かくいろいろの事を話して、東京の川窪から智恵をつけられた通り、川窪自身が非常に差し迫った入用があって居る様に話した。