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えいぞうのし

栄蔵の死

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 38,295 字 · 77 页

青空文庫

何年ねかして置くかしれないものを、まあいわば、永年の御親しずくでいただくんですから。

三四十円のものを五十円で手を打ちましょうと云うのは、非常に商売気をはなれたこってす。

それでおいやだったら御ことわりです。

これだけ云って政は、煙草をスパスパふかして一言も口を開かない。

五十円などとはあまりの踏みつけ様だ、いくら自分が目利きでないからって、これ位の事は分ると栄蔵は上気せた顔をして反対した。

それなら、今売るのをやめて、どっかからそれより高く買う男の来るのを待ってらしったらよかろう。

と意志悪く、政は帰る様な気振りを見せたりした。足元を見こんで、法外な事はしないがいいと栄蔵は怒ったけれ共、冷然と笑いながら、

「人の足元を見ないでいい商売は出来ませんやね。

と云った。そしてとうとう桐は五十円で落されてしまった。

紫の雲の様に咲く花ももう見られないと達は、その木の下で、姉と飯事をした幼い思い出にひたって居た。

政が帰ってからも栄蔵は非常に興奮して耳元で鼓動がするのを感じて居た。

お節を前に置いて栄蔵は、政を罵って居るうちにフトお節の懐に何か手紙の入って居るのを見つけた。