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とうりんどうのさとうづけ

桃林堂の砂糖づけ

中谷 宇吉郎

「あまカラ 第118号」甘辛社、1961(昭和36)年6月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,306 字 · 5 页

青空文庫

セロリーや、グレープ・フルーツなどは、むせるような香気である。

サラ・リイの主人は、一片一片を、じっとかみしめていたが、やがて納得したような顔をして、静かに口をひらいた。

「今まで言ったことは、全部取り消す。日本でいわれる自然の香気というものの意味がはじめてわかった」

と言った。

未開な原始工業を、近代的に教導しようとした「親切心」と、「全部取り消す」というあっさりした納得ぶりと、いずれも如何にもアメリカ人らしいところがあって、たいへん面白かった。

夕食を大阪の友人によばれていた私たちは、丁寧に謝意をのべて、間もなくここを辞去した。夕闇は迫り、雨は本降りになっていた。

(昭和三十六年六月)