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きりゅうつうしん

桐生通信

坂口 安吾

「読売新聞 第二七七五五号~第二八〇二五号」1954(昭和29)年3月11日~12月6日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 16,394 字 · 33 页

青空文庫

その代り町全体が石段の斜面だからデブの私には町の散歩が苦手だ。車で榛名湖へ行って歩くのが仕事のあとのたのしみであった。かん木ばかりのせいか、榛名は山の道も湖もきわだって明るいのが特色だ。

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仕事のあいまに家から生後一年の子供をよぶ。子供は温泉で遊ぶのが好きだ。ある日宿の水差しのフタをオモチャに遊んでいてこわしたので女中にわびると、女中が言下に「ハア、先日水差しの下の方をこわしたお客さまがありましてね、ちょうどよろしゅうございます」

と言った。あまりのことにメンくらったが、窓から吹きこむ山の冷気にもましてそう快でもあった。

こういう海からはなれた温泉地や私の住む桐生などでも今年の特色はマグロのややマシなのがフンダンにあることだ。去年など桐生ではお祭の時でもなければ本マグロが見られなかった。今年は常に本マグロがある。田舎がマグロを食う年らしい。私もガイガー計数管を信用して大いに食っているのである。伊香保では一晩だけだったが、すてきなトロにめぐりあってお代りした。

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桐生で生きている魚がたべられるのはウナギのほかには夏のアユだけだ。