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きりゅうつうしん

桐生通信

坂口 安吾

「読売新聞 第二七七五五号~第二八〇二五号」1954(昭和29)年3月11日~12月6日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 16,394 字 · 33 页

青空文庫

田舎のメインストリートから

私の住居は田舎の小都市ながらメインストリートに位している。この生活は少々の騒音を我慢すれば、かゆいところに手が届いて便利である。たとえば消防車のサイレンが行きすぎると、広告塔が間髪をいれず、

「ただいまの火事はどこぞこでございます」

と叫んでくれる。この広告塔ははなはだ、し(斯)道に熱心で、深夜でも報告を怠らない。四隣みな商店だから急場の必要品にも手間ヒマがかからず、居ながらにして街の呼吸が伝わってくる。

けれども私が本当に呼吸しているのは東京の空気である。私はこの小都市に住んで、年に二度ぐらいしか上京しないが、日々の読み物、そして心の赴く物は人の世の中心的なもの、本質的なものからそれることはできない。私の目や呼吸が東京の空から離れることはあり得ないのである。

私は毎日この町のメインストリートを散歩する。その目に映じるものは風景にすぎない。心の住む場所はまた別で、それはどこに住んでも変りがないものだ。

★

小工業と商業でもつ桐生はおのずから個人的な都市で、したがって商魂もたくましい。ウカウカすれば隣人の目の玉もぬく機敏さが露骨で、むしろ好感がもてるのである。