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くわのきものがたり

桑の木物語

山本 周五郎

「キング」大日本雄辯會講談社、1949(昭和24)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,815 字 · 79 页

青空文庫

「これは学問です、孔子さまという聖人のおしえなのです、有難い、ごくまじめな、尊い学問です」

そうして滔々となにか饒舌りだした。悠二郎はこいつはいいと思った、云ってることはやっぱりちんぷんかんだが、同じちんぷんかんなら聞いてるだけのほうが楽だ。第一また先生の代赭色になった顔や、自分ではよっぽどもの凄いつもりなんだろう、ぎょろぎょろ光らせる眼だまや、活溌につばきをとばして動く口など、こっちから眺めているのは相当に面白い。

――小梅の勝んべも怒るとつらがあんな色になりやがった、……あの眼だまは誰に似てるかしらん、瓦屋の熊だろうか。

こういう連想もいろいろ湧いてくる。

――ずいぶんよく動く口だなあ、休みなしにぱくぱくやってやがら、……そうだ、お父つぁんの飼ってる金魚ってのをまだ見てねえぞ。

これは素読なんてへんなものよりいい、これに限ると思ったので、それからは飽きてくるとこの手を使った。

「孔子っていつごろのにんげんだい」

「敬称をおつけなさい、孔子などと呼びすてにしてはいけません、聖人といわれるくらい偉大な方なのですから、――孔子さまは今から二千三百年ほどまえの方です」