轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

つちのなかからのはなし

桜の森の満開の下

坂口 安吾

坂口安吾『桜の森の満開の下』。同一底本的分册已合并为一书。收入:土の中からの話、家康、閑山、禅僧、小さな部屋、道鏡。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,558 字 · 153 页

青空文庫

何ものに取りすがって彼は泣けばよいのだか、取りすがるべき何ものもなかった。無とは何か。失うことか。彼はすべてを失った。

人々が彼の即位をもとめることを、彼は信じて疑わなかった。この偉大なる人、高雅なる人、可憐なる人、凜冽たる魂の気品の人の姿がなしに、内裏の虚空に坐したところで、何ものであろうか。彼の心は天皇の虚器を微塵ももとめていなかった。彼は内裏に戻らなかった。政朝に坐らなかった。人々の顔も見たくはなかった。彼等の言葉のはしくれも、耳に入れるに堪え得なかった。

彼は女帝の陵下に庵をむすび、雨の日も、嵐の夜も、日夜坐して去らず、女帝の冥福を祈りつづけた。

百川の待ちのぞんだ機会はきた。然し、はりあい抜けがした。あまりだらしなく、馬鹿げきっているからだ。当の目当の人物は陵下に庵を結び、浮世を忘れて日ねもす夜もすがら読経に明け暮れているからだ。

然し、百川は暗躍した。彼は暗躍することのみが生き甲斐だった。

右大臣吉備真備は天武天皇の孫、大納言文屋浄三を立てようとした。然し浄三はすでに臣籍に下った故にと固辞するので、その弟の大市をたて、宣命も作られ、輿論も概ね決していた。