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きょうゆう
梟雄
「文藝春秋 第三一巻第八号」1953(昭和28)年6月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,160 字 · 31 页
二十三歳の信長は全身の総血をしぼってこの難局と格闘した。
尾張の本来の守護職は斯波氏であった。その子孫は信長の居候をしていた。
三河には足利将軍家の次の格式をもつ吉良氏が落ちぶれて有名無実の存在となっていた。今川氏の世話をうけていたが、今川よりも一ツ格式は上の名家であった。
信長は今川に使者をだし、今後斯波氏を立てて尾張の大守とするから、三河も吉良を大守とたて、両家のヨシミを結びたいと申し送り、今川の同意を得た。すでに四月だ。
信長は自ら斯波氏を送って三河へ行き吉良氏と斯波氏参会、式礼をあげて、ヨシミをとげて、尾張へ戻る。つづいて、斯波氏を尾張の国守と布告する。自分は城の本丸を居候の斯波氏に明け渡し、それまで斯波氏が居候をしていた北屋蔵へ引越して隠居した。
こうしておいて、急いで美濃へかけつけた。もう道三の出陣だった。
自分の城が今では自分の城でなくて、斯波氏の城だ。彼はそこの居候の隠居にすぎない。この計略によって、信長の敵が彼の城を分捕ることを遠慮するかどうか。そこまでは分らないが、これが信長の総血をふりしぼって為し得たギリギリの策であった。
しかし道三は信長の援軍などは当にしていなかった。