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きょうゆう
梟雄
「文藝春秋 第三一巻第八号」1953(昭和28)年6月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,160 字 · 31 页
やがて南陽房は兄にまねかれ、美濃今泉の名刹常在寺の住職となった。一山の坊主は寄りつどい、近代無双の名僧に別れを惜んで送りだしたのである。すべては昔に戻り、近代無双の名僧の名はどうやら再び法蓮房のものとなる時が来たようであった。
けれども、法蓮房はバカバカしくなってしまったのである。井の中の薄馬鹿な蛙のような坊主どもの指金できまる名僧の名に安住する奴も同じようなバカであろう。坊主などはもうゴメンだと思った。
乱世であった。力の時代だ。時運にめぐまれれば一国一城の主となることも天下の権力者となることもあながち夢ではない。
彼は寺をでて故郷へ帰り、女房をもらい、松波庄五郎と名乗って、燈油の行商人となった。
まず金だ、と彼は考えたのだ。仏門も金でうごく。武力の基礎も金だ。人生万事、ともかく金だ。
彼は奈良屋又兵衛の娘と結婚したが、それは商売の資本のためであった。燈油行商の地盤ができると、女房は不要であった。一所不住は仏門の妙諦である。
彼は諸国をわたり歩き、辻に立って油を売った。まず一文銭をとりだして、弁舌をふるうのである。
「およそ油を商う者は桝にはかって漏斗から壷にうつす。