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かんおけのはなよめ

棺桶の花嫁

海野 十三

「ぷろふいる」1937(昭和12)年1~3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,845 字 · 86 页

青空文庫

杜は痛心を圧えることができないままに、それからズンズン一人で歩きだした。

橋桁を渡って、本所区へ――

そして彼は当途もなく何処までもズンズン歩いていった。まるで天狗に憑かれた風のように速く――。

7

「よう、あんたァ、――」

と、お千が追いすがるようにして、後方から声をかけた。

「……」

杜はお千の声を聞いてピクンとした。しかし振り向き返りもしないで、相変らず黙々としてズンズン歩いていった。

「よう、何処まで行くのさあ。――」

それでも彼は黙って歩みつづけた。

するとお千がバタバタと追いついてきて、彼の腕をとらえた。

「こんな方へ来てどうするの。柳島を渡って千葉へでも逃げるつもりなのかネ」

でも、彼は執拗に黙っていた。お千は怒りを帯びた声で、

「チョッ」と舌打をし、彼の腕を邪険にふり解いた。

「なんだい、面白くもない。黙って見ていりゃ、いい気になってサ。いくら年が若いたって、あのざまは何だネ。あんな乳くさい女学生にゾッコン惚れこんで、手も足も出やしないじゃないか。あたしゃ横から見ていても腹が立つっちゃない。お前さんはなかなかしっかりもんだと思って、あたしゃ前から――イエ何さ、しっかりした人だと思ってたのさ。