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かんおけのはなよめ

棺桶の花嫁

海野 十三

「ぷろふいる」1937(昭和12)年1~3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,845 字 · 86 页

青空文庫

四人の女生徒は棺桶を担いで近づいた。しかし彼女たちは一向芝居に気ののらぬ様子で、なにか口早に囁きあいながらシーザーの棺を壇の方へ担いできた。先生の眼が、けわしく光った。

やがて棺は下におろされた。

アントニオが壇上で大きなジェスチュアをする。

「おお、ローマの市民たちよ!」

と、前田マサ子がここを見せどころと少女歌劇ばりの作り声を出す。

そこで棺の黒布がしずかに取りのぞかれる。……

――と、シーザーならぬ小山ミチミが棺の中に横たわっているのが見える――

という順序であったが、棺の蔽いを取ってみると、意外にも棺の中は空っぽだった。

「おお、これはどうしたッ」

「アラ小山さんが……」

一同は肝を潰して、棺のまわりに駈けよった。

「……あのゥ先生、棺をもちあげたとき、あたし変だと思ったんですのよ。だって、小山さんの身体が入っているのにしては、とても軽かったんですもの」

「ええ、あたしもびっくりしたわ」

「でも、担いでしまったもんで、つい云いそびれていたんですわ」

講堂入口をみたが、扉はチャンと閉まっている。さっき棺桶を置いてあった長椅子の蔭をみたが、さらに小山ミチミの姿はなかった。