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かんおけのはなよめ

棺桶の花嫁

海野 十三

「ぷろふいる」1937(昭和12)年1~3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,845 字 · 86 页

青空文庫

自分はなにかヘマをやっていないであろうか。待てよ――。

杜は、裏口の幕をはねのけるようにして、小屋のなかに飛びこんだ。

彼はそこに今の今まで自分が横わっていた寝床を見た。その隣にはお千の空虚の寝床があった。これはいけないと思って、彼は前後の見境もなく、今まで寝ていた自分の寝床を畳んで横の方に近づけた。

そのとき、寝床の下の蓙の上に、ポツンと赤黒い血の痕がついているのを発見して、彼は驚愕を二倍にした。毛布にも附着しているだろうと思って改めてみると、幸いなことにほんの僅かついているだけだった。彼はそこのところの毛を一生懸命でった。

蓙の上の血痕をそのまま放置しておくことは、彼の弱い心が許さなかった。彼はナイフを出して、その血痕の周囲を蓙のまま四角に切りとった。

毛布の血痕と、蓙に赤黒く固まりついている血痕とは捨てては危険である。彼は咄嗟に、その二つの証拠品を、マッチ函の中に収った。これで血の脅威からは脱れることができた。

もう何か残っていないかと、あたりを見廻した。

「おお、これァ何だッ」

妙なものがお千の寝床の向う側に落ちていた。拾いあげてみると、それは古風な縫い刺し細工の煙草入であった。