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かんおけのはなよめ

棺桶の花嫁

海野 十三

「ぷろふいる」1937(昭和12)年1~3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,845 字 · 86 页

青空文庫

たださっき彼が脱ぎそろえたスリッパがチャンと元のとおりに並んでいる。

杜先生は、講堂の扉を開けてとびだした。外には風もないのに花びらがチラチラと散っているばかりで、誰一人見えない。

不思議だ。

彼は大声をはりあげて、見えなくなった少女の名を呼んでみた。――しかしそれに応えるものとては並び建つ校舎からはねかえる反響のほかになんにもなかった。それはまるで深山幽谷のように静かな春の夕方だった。

杜はガッカリして、薄暗い講堂の中にかえってきた。女生徒は入口のところに固まって、申し合わせたように蒼い顔をしていた。

「どうも不思議だ。小山は、どこへ消えてしまったんだろう!」

杜は、壇の下に置きっぱなしになっている空っぽの棺桶に近づいて、もう一度なかを改めてみた。たしかに自分が腕を貸して、この中に入れたに違いなかったのに……。

「変だなァ。――」

彼は棺の中に、顔をさし入れて、なにか臭うものはないかとかいでみた。たしかに小山ミチミの入っていたらしい匂いがする。

「オヤ――」

そのとき彼は、棺の中になにか黒いような赤いような小さな丸いものが落ちているのに気がついた。

なんだろうと思って、それを拾いあげようとしたが、