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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
04 第四部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,078 字 · 285 页
ましょう。
「待て、内膳の話しでよく聞きそこねた、屋代ら五名の強訴をもういちど聞こう」
――屋代五郎左衛門、木幡源七郎、早川八左衛門、飯淵三郎右衛門、大河内三郎右衛門ら五名が、家中仕置の不正について上書をしたため、帰任する幕府国目付を、その途中、伊達郡桑折の宿に訪ねて強訴した、ということでございます。
「家中仕置の不正か、うん、そうだったな、うん、隼人、正に云うとおりだ、これは揃ったぞ」
――涌谷どのの出府も、おそらく、境論だけが目的ではございますまい。
「そうと思うか」
――たとえ老耄されたとしても、僅かな地境の争いなどを老中に訴え出るほど涌谷どのは無分別な人ではございません。
「隼人は本当にそう思うか」
――境論は老中への手掛り、まことの目的はその裏にあると存じます。
「まことの目的とは」
――申上げてもよろしゅうございますか。
「おれにも推察はつくが、まず聞こう」
――私はおそらく、岩沼(田村右京)さまとお上のお二人、つまり両御後見に対する非難の訴えであろうと存じます。
「岩沼とおれの非難」
――もちろん私の臆測でございます。
「待て、それは当っているかもしれぬ」