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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

04 第四部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,078 字 · 285 页

青空文庫

断章(十五)

――津田玄蕃どのがおめどおりを願っております。

「よし、とおせ」

「ずっと寄れ、玄蕃、辞儀は無用だ、ずっと寄れ、一つ遣わそう」

――頂戴するまえに申上げたいことがございます。

「聞こう、なんだ」

――おそれながら、お人払いを。

「構わぬ、隼人に隠すことはない、遠慮なく申せ」

――老中評定の日取が決まりました。

「いつだ」

――明後二十七日、月番老中板倉侯の屋敷でございます。

「列座の顔ぶれは」

――老中は酒井侯はじめ、久世侯、土屋侯、板倉侯、稲葉侯、申次として町奉行の島田出雲守、作事奉行の大井新右衛門、大目付は大岡佐渡守、目付は宮崎助右衛門、以上の由にございます。

「召されるのは誰と誰だ」

――涌谷さま、柴田外記、原田甲斐、古内志摩の四名に、聞役は蜂谷六左衛門でございます。

「うん、それで」

――初めに涌谷さまは境論をもちだし、続いて家中の政治紊乱を訴えられるとのことです。

「老中はどう扱うようすだ」

――板倉侯が涌谷さまを召されましたとき、涌谷さまは陸奥守お為筋について述べるよう、また、原田甲斐は一ノ関さまについて弁護するがよかろう、との内意をもらされたとうかがいました。