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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

04 第四部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,078 字 · 285 页

青空文庫

東市正宗興は豊前の小倉へ預けられ、また兵部、東市正らの妻子も、百人扶持、二百人扶持を付けて預けられている、――もし兵部が陰謀の発頭人であるなら、原田どのより罪が軽いという道理はない、原田どのでは当歳の孫にいたるまで、男子はことごとく死罪、家名も断絶したうえ、ひとり逆臣の汚名を負わせられた、兵部は伊達一門、原田どのは家臣だからであろうか、いや」玄察は重おもしく首を振った、「いや、そうではない、三月の出来事は万治の大変につながっている、綱宗さまに対する逼塞の沙汰が、酒井邸の評定にまで糸を引いているように思う――表てにあらわれたこととはまったくべつなところで、なにか強大な力がはたらいていた、というふうに思うのです」

その点を糺してみたが、古内志摩はなにも云わなかった、安芸も甲斐も外記も、六左衛門まで死んでしまったし、古内志摩は生き残った唯一の証人であるが、これも刃傷の場にはいなかったため、安芸から聞いた言葉のほかには、なにも知らないというばかりであった。つきつめたところ原田甲斐が逆臣であった、という漠然とした表示以外には「これが慥かだ」という証明は一つとして存在しないのであった。