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はしのした
橋の下
山本 周五郎
「小説新潮」新潮社、1958(昭和33)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,189 字 · 25 页
三
と老人は云った、「二十一の冬のことですが、私はまえからそのつもりでいた娘を、自分の嫁にと望みました、娘の家は番がしら格で、彼女の年は十七歳、もちろん当人も私の妻になることを承知していたのです、しかし、その申入れは断わられました」
三
――せっかくではあるが、娘はもう婚約した相手があるから。
娘の親は仲人にそう云った。そして婚約の相手を訊くと、その友達の名をあげたのだという。老人はちょっと口をつぐみ、茶を啜ろうとしたが、湯呑を口までもっていったまま、それを飲もうとはせずに、顔を低く俯向けた。
「私は友達に会いにゆきました」とかなり経ってから老人は続けた、「友達は婚約したことを認め、私はかっとなりました、彼は私と娘のことをよく知っている、幼いころから知っている筈です、娘の親にぜひと懇望されたのだそうですが、私と娘のことを知っている以上、断わるのが当然ではないか。
――きさまは他人の妻をぬすんだ。
私はそう云いました、言葉はもっと激しく、もっと卑しいものだったのです、友達はたいそう冷静でした、私の怒りをそらし、私をなだめようとつとめました、それが却って私を逆上させたと思うのですが、私は彼にはたし合を申入れたのです」