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はしのした

橋の下

山本 周五郎

「小説新潮」新潮社、1958(昭和33)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,189 字 · 25 页

青空文庫

そのときばったりの稼ぎを追って、東へゆき西へゆき、二年と同じ土地にいたことがない、というくらしが続いたのです」

「出奔してから七年めのことですが」と老人は続けた、「私たちはいちど国許へ帰りました、いっそ名のり出て、処罰を受けようと思ったのです、しかしそれができなくなった、というのは、三年まえに母は死に、家名も断絶していましたし、私の斬った友達は生きていたばかりでなく、二百石あまりの小姓頭にとりたてられていたのです、――さよう、存分に斬ったと思ったのは誤りで、友達の傷はさしたることもなかったし、却って家中の同情を集める結果になったようです、これでは名のって出ることはできません、仮にそうする勇気があったとしても、世のもの笑いのたねになるだけで、なんの意味もないからです、私たちはすぐにそこを去りました」

妻をその実家へ帰らせることも不可能であった。妻にはもとよりそんな気持はない。そのくらいなら自害をする、と妻は云った。こうしてまた、二人は放浪生活に戻ったのだが、お互いの気持はまえよりも悪くなった。徒士にすぎなかった友達が、二百石あまりの小姓頭になっていたこと。