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はしのした
橋の下
山本 周五郎
「小説新潮」新潮社、1958(昭和33)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,189 字 · 25 页
たいそう藩主にめをかけられているので、将来さらに出世をするだろうこと。老職の家から妻を迎え、すでに一男一女の子があることなどが、二人の気持に深い傷跡を残したのである。
――あのとき自分さえでしゃばらなければ、妻はいま彼を良人にし、家中の人たちの羨望と尊敬のなかで、安穏な生活ができたのだ。
老人はそう思ったし、老人の妻はまたこう思った。
――この人をこんなに落魄させたのはあたしの責任だ、この罪をつぐなうことはできない。
そして二人はかの友達を憎んだ。彼さえいなければよかったのである。二人は幼いころから互いに好きあっていたし、成長してもその愛情は変らなかった。身分に少し差はあったが、結婚がゆるされないほどの差ではなかった。かの友達さえいなければ、二人はいっしょになれたであろうし、家柄と身分とで平安な生活ができたことだろう。二人をこのような不幸に追いやったのはかの男である、憎むべきはかの男だ。
「友達を憎むことが、いっとき私どもの愛情をかきたてたようでした」と老人は首を振りながら云った、「しかし、それも長くは続かなかった、憎悪という感情のなかには、人間は長く住めないもののようです。