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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
05 第五部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,443 字 · 398 页
六 板木の音
」
そのあと、就寝前の行事として、最初の静坐がはじまった。塾生たちは、各室ごとに、きちんと縦にならび、朝倉先生の指導にしたがってその姿勢をとった。
次郎は足音をたてないように、みんなの間をあるきまわり、いちじるしく姿勢のわるいのを見つけると、それをなおしてやった。
まっさきにかれの目についたのは、田川だった。田川はいやに胸を張り、軍隊流の不動の姿勢でしゃちこばっていた。そして、次郎が肩から力をぬかせようと、どんなに骨をおっても、なかなかそうはならなかった。これに反して、飯島は最初から、ごく器用に正しい姿勢をとっていた。もしかれが、おりおりうす目をあけて朝倉先生の顔をのぞくようなことさえしなかったら、かれの静坐は、塾生の中でも、最もすぐれた部類に属していたのかもしれなかったのである。
静坐は十分足らずで終わった。
次郎は、いつになくつかれていたが、床についてからも、なかなか寝つかれなかった。
六 板木の音
コーン、コーン、――コーン、コーン。
凍りついたような冷たい空気をやぶって、板木が鳴りだした。そとはまだ、真っ暗である。白木綿の、古ぼけたカーテンのすき間から、硝子戸ごしに、大きな星がまたたいているのが、はっきり次郎の眼に映った。