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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
05 第五部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,443 字 · 398 页
一〇 異変(※(ローマ数字2、1-13-22))
」
次郎は、何か心のなごむような気持ちで、じっと眼をふせていた。心の動揺を感じたあと、夫人と二人きりで話していると、かれはいつとはなしにそんな気持ちになるのだった。夫人の言葉の内容にそれだけの説得力があるわけでは必ずしもなかったが、その言葉のはしばしからにじみ出るものが、かれのいらだつ神経をやわらかになでてくれたのである。
ストーヴは底ごもるような音をたて、鉄の膚をほの赤くぼかしており、窓外の木々は雪をかぶってどっしりと重かった。
「ぼくには、落ちつくということ、まだよくわからないんです。」
次郎は、かなりたって、ぽつりとそんなことを言った。それはしかし、朝倉夫人に対する抗議ではむろんなかった。また、かれの深い苦悶の表白であるとも言えなかった。うら悲しいような、甘えたいような気持ちが、自然にそんな言葉となって、かれの唇をもれたといったほうが適当だったのである。
一〇 異変(※(ローマ数字2、1-13-22))
田沼先生が、雪をけって自動車をのりつけたのは、もう小川先生の講義もすみ、食事当番の塾生たちが広間に食卓の準備をはじめていたころであった。次郎が胸をどきつかせながら出迎えると、先生は、まだ靴もぬがないうちに言った。