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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

05 第五部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,443 字 · 398 页

青空文庫

一三 旅行

」

朝倉先生が、こんなに、物につかれたように、きれぎれなものの言い方をするのは、まったくはじめてのことだった。みんなはおびえたように先生を見まもった。朝倉夫人と次郎とは、先生の言葉がおわると、すぐおたがいの顔を見あったが、その眼は友愛塾のさしせまった運命について何かささやきあっているかのような眼だった。

ただ大河無門だけは、その間にも、しずかに眼をとじているきりだったのである。

一三 旅行

それから一週間は、表面何事もなくすぎた。次郎は、一方では、塾の将来についての予感におびえながら、また一方では、道江からも恭一からも、その後何のたよりもないのを気にやみながら、ともかくも予定どおりの行事をすすめていった。季節はもう武蔵野名物の黒つむじが吹きあげるころで、朝夕の清掃にはとりわけ骨が折れたが、同時に水がぬるみ、雑巾をしぼる手がかじかむようなこともほとんどなくなっていた。

友愛塾では、毎回の講習期間の終わりに近く塾長以下全員そろって三泊四日の旅行をやることになっていた。それは塾の生活を外に持ち出し、特殊な教育環境において練りあげたものを、世間という普通の社会環境において試そうというのが主目的であったが、また近県在住の第一回以来の修了者たちと親交を結び、そういう人たちの郷土生活の実際に接したいというのも、重要なね