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むさしの
武蔵野
山田 美妙
「読売新聞」1887(明治20)年11~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,798 字 · 26 页
西向きの一室、その前は植込みで、いろいろな木がきまりなく、勝手に茂ッているが、その一室はここの家族が常にいる室だろう、今もそこには二人の婦人が……
けれどまず第一に人の眼に注まるのは夜目にも鮮明に若やいで見える一人で、言わずと知れた妙齢の処女。燈火は下等の蜜蝋で作られた一里一寸の松明の小さいのだからあたりどころか、燈火を中心として半径が二尺ほどへだたッたところには一切闇が行きわたッているが、しかし容貌は水際だッているだけに十分若い人と見える。年ごろはたしかに知れないが眼鼻や口の権衡がまだよくしまッていないところで考えればひどく長けてもいないだろう。そのくせに坐り丈はなかなかあッて、そして(少女の手弱に似ず)腕首が大層太く、その上に人を見る眼光が……眼は脹目縁を持ッていながら……、難を言えば、凄い……でもない……やさしくない。ただ肉が肥えて腮にやわらかい段を立たせ、眉が美事で自然に顔を引き立たせたのでやや見どころがあるように見える。そのすこし前までは白菊を摺箔にした上衣を着ていたが、今はそれを脱いでただ蒲の薄綿が透いて見える葛の衣物ばかりでいる。
これと対い合ッているのは四十前後の老女で、これも着物は葛だが柿染めの古ぼけたので、どうしたのか砥粉に塗れている。