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ダンスマカブル
死の舞踏
野村 胡堂
「文芸倶楽部」1928(昭和3)年9月増刊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,576 字 · 21 页
四
「――――」
「赤鉛筆の印は、誰が付けても同じことで、幽香子姉様が書いたのだという証拠はありません。それに――」
「わかった、一寸考えさしてくれ」
私はもう一度ピアノの上に、楽譜を投り出して考えこみました。
楽譜の暗号は、音楽家だけにわかるもので、これを警官に呑み込ませるのは、容易の業ではありません。それに。二人の医者が明瞭に病死と診断して、焼いて骨にして百日も経った死体を、今更問題にしたところが、どうなるでしょう。
「それじゃ、何うすればいいのだ。隣りの馬鹿騒の中へ、この楽譜を持ち込んで、佐良井の奴を面責しようか」
「あれ、そんな事をなすっちゃいけません、そんな事で驚くような相手では無いんです」
愛子は必死と、憤怒に狂って理性を失いかけた私の胸にすがり付きます。
四
愛子の涙にひたって居る内に、私の怒は漸く凪いで、やるせない悲みが、その代りに私の胸を領してしまいました。
「可哀想な幽香子、お前はとうとう殺されたのかい、あの残虐な夫を憎む術さえ知らなかったお前も、さすがに死に際になって、その怨を私にだけ知らせるために、こんな手数のかかる暗号を工夫したのかい、可哀想な幽香子」