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しまでをかたる

死までを語る

直木 三十五

「話」1933(昭和8)年9月号~1934(昭和9)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,739 字 · 85 页

青空文庫

第一大隊日を定め

陸軍繰出す熊本城を

数万の弾丸飛越えて

吾兵各所に進撃す

と、いう唄を唄いながら、御下げ髪に白鉢巻、刀を抜いて踊るのに惚れたのだから、その頃から、ファッショだったのであろう。

所が、小遣がない。それで、花房が、寄席の掛けもちの為、車で走るのを、私が追っかけて――車は街路の真中を、私は、恥ずかしいから軒下を――走りながら、飽く程顔を見て、へとへとになって

(何んて馬鹿だ)

と、思ったが、これを二度やった。三度もやったら、気狂いが追っかけてくると花房は思ったであろうが、この時、花房を思う歌などを作った。これが、私の歌の最初であるが忘れてしまった。

その内に、学校は無し、弟は十歳にもなって、背負わなくてもいいし、時間が余るし、同じ落第仲間へ遊びに行く事を覚えた。同級の井上市次郎が、京町堀にいたが、ここへ遊びに行っている内に、そこから四五軒東の佐々木という家の娘の子と、親しくなった。雪ちゃんという名である。齢は十四歳。これは恋でなく、ただ可愛がっていただけであるが、その可愛がり方が、並大抵でない事は、後にかく。

この井上の母の妹が、後に私の妻となった女で、京町堀小町と呼ばれて、美人であったが、婚期を失して、二十六歳にもなって独身者であった。