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しまでをかたる

死までを語る

直木 三十五

「話」1933(昭和8)年9月号~1934(昭和9)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,739 字 · 85 页

青空文庫

と、云った。いつこの三助、私の大阪生れを知ってるのだろうと

「東京と同じだよ」

と、答えると

「私は、これで、戦争に行って、約半ヶ年あっちにおりましたよ」

あれ、又、支那人かと、これは二度目だけに、私も、自分の顔の支那出来を、肯定しなくてはならんようになった。だが

「わかるかね」

と、いうと

「随分、あんた日本語がうまいが、矢張り、わかりますよ」

私は暫く、これから、その湯屋へ行かなかった。戻ってきて、この話をすると

「矢張り、あるのかしら」

と、女は答えたが、生活に打ちのめされていた頃とて、前のようにおもしろくはなかった。声高く笑えないで、微かに不快ささえあった。

これだけならいいが、大震災の時に、私の情婦を、巣鴨へ訪ねて行って、帰り途、護国寺の前へくると、自警団につかまってしまった。

「お前、朝鮮人だろう」

と、一人が云うが早いか、ぐるぐると取り巻かれてしまった。

「戯談云っちゃあ困る」

「いや、朝鮮人だ」

「何んな面だ」

とか

「ちがうちがう、日本人だ」

とか、いろいろ周囲で騒いで、無事に納まったが、これで見ると、朝鮮式の所も、多少はあるらしい。

つまり、いくらかのんびりとしている顔で、そこへ女が惚れるのにちがいない。