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しまでをかたる

死までを語る

直木 三十五

「話」1933(昭和8)年9月号~1934(昭和9)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,739 字 · 85 页

青空文庫

木の実ちゃんがあって、駄目かも知れんが、困っているなら」

女房が

「やります、保高さん、何んな事でも」

「しかし子供が」

「子供は、僕が育てる」

「そうかね。月給は十八円で、電車のパスが二冊出るんだ。そして別に手当が五円だけれど――」

「結構だわ、保高さん、頼んで頂戴」

女房は、必死であった。

(見っともない、騒ぐな)

と、私は一寸、睨みつけたが、うまく行ってくれと、心の中では祈っていた。この時の読売婦人欄の主幹が、前記の前田晁氏、上司小剣氏も在社された頃である。

「青野も、保高もいるし、やってみろ。一ヶ月でもいいや、十八円ありゃ助かるからな」

「そう、じや、社へ明日来てくれますか」

「伺います」

今、大朝にいる恩田和子女史も、この時の記者であった。五月頃であったであろうか、女房は婦人記者として、読売新聞へ勤める事になったが、亭主の私は、何うであろう。生れて一年足らずの長女のお守である。私が、あぐらをかいて、左脚の所を枕に頭をのせ、脚を私の右脚の上へ置くと、子供は、あぐらの中へ、すっぽりと入ってしまう。これを、上へ下へ動かすと、子供は快く寝るが、男の子守はやってみるといい。