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しけんといきなわ
死剣と生縄
江見 水蔭
「講談倶楽部」1925(大正14)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,104 字 · 31 页
八
それが一番の上策だと考えた。
小刀を水中で抜いた。泳ぎながら、片手切りに水草を切払った。忽ち活路は開けたのであった。
苦心を重ねて人喰い藻と闘いつつ、漸く小虎の傍まで行った。
「おう、旦那様っ」
小虎此時は早や疲労し切っていた。けれども水練知らぬ者のように、突如救いの人へ抱きつくような危険はしなかった。
八
小虎の全身に搦んでいる種々の藻の種類。それを切払って水妖の囚われから救おうとする竜次郎の苦心。それは実際一通りでは無かった。
自分も片手で泳がなければならぬ。片手に待つ小刀も水中の事とて、思う様には遣えぬのだ。注意を少しでも怠ると、小虎の身体に傷を付けるかも知れないのだ。指一本斬り落したからとて、それは大変なので有った。
「焦慮ってはならぬ。少しの間の辛抱だ」
眠れる竜の鼻の先、珠を取った海士よりも、危い芸をつづけた竜次郎は、漸く水草を切払って、小虎を自由の身たらしめた。
「命の親。この御恩は忘れません」と小虎は真底から感謝した。
「それ処か。少しも早く上陸を」と竜次郎は先に立って、再び邪魔な水草を切払いながら、元の岸へ泳ぎ戻るので有った。前にも既に大分切ったので、今度は大変に楽で有った。