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しかばねをくうおとこ

死屍を食う男

葉山 嘉樹

「新青年」1927(昭和2)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,482 字 · 16 页

青空文庫

安岡は全く眠ったふうを装った。が、眠れもしないのに眠ったふうを装うことは、全く苦しいことであった。だが、何かしら彼の心の底で好奇心に似た気持ちが、彼にその困難を堪えしめた。

深谷は、昨夜と同じく何事もないように、ベッドに入ると五分もたたないうちに、軽い鼾をかき始めた。

「今夜はもう出ないのかしら」と、安岡は失望に似た安堵を感じて、ウトウトした。

と、また、昨夜と同じ人間の体温を頬の辺りに感じた。

「確かに寝息をうかがってるんだ!」

だが、彼は今までどおりと同じ調子の寝息を、非常な努力のもとに続けた。

パッと電燈がついた。そのまま深谷のスリッパがパタパタとドアのほうに動いた。が、深谷はドアの前でそれを開くと、そのまま振り返って、安岡のほうをジーッとみつめた。その顔の表情はなんともいえない凄いものであった。死を決した顔! か、死を宣告された顔! であった。

彼は安岡が依然のままの寝息で眠りこけているのを見すますと、こんどは風のように帰ってきて、スイッチをひねらないで電球をねじって灯を消した。

そうして開けたドアから風のように出て行った。

安岡はそれを感じた。