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ぼしじょじょう
母子叙情
岡本 かの子
「文学界」1937(昭和12)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,355 字 · 153 页
「ええ、そりゃそうですとも、基礎教育をしっかり固めてから、それから本場へ行って勉強する。これは順序です。だからあたしたち、先へ行ってよく向うの様子を見て来てあげますから、あんたも留守中落着いて勉強していなさい。よくって」
かの女は賢そうにむす子にいい聞かせた。それでむす子もその気でいた。
ところが、遽しい旅の仕度が整うにつれ、かの女は、むす子の落着いた姿と見較べて憂鬱になり出した。とうとうかの女はいい出した。「永くもない一生のうちに、しばらくでも親子離れて暮すなんて……先のことは先にして――あんたどう思います」逸作は答えた。「うん、連れてこう」
親たちのこの模様がえを聞かされた時、かなり一緒に行き度い心を抑えていたむす子は「なんだい、なんだい」と赫くなって自分の苦笑にむせ乍ら云った。そして、かの女等は先のことは心にぼかしてしまって、人に羨まれる一家揃いの外遊に出た。
足かけ四年は、経った。かの女の一家は巴里にすっかり馴染んだ。けれども、かの女達はついに日本へ帰らなくてはならない。
その時かの女は歯を喰いしばって、むす子を残すことにした。むす子は若いいのちの遣瀬ない愛着を新興芸術に持ち、新興芸術を通して、それを培う巴里の土地に親しんだむす子は、東洋の芸術家の挺身隊を一人で引受けたような決心の意気に燃えて、