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みずとほね
水と骨
佐藤 垢石
「釣趣戯書」三省堂、1942(昭和17)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,477 字 · 11 页
昔から裏日本には水田が広く拓けていた。ところが表日本は冬陽当たりがよく暖かいにも拘わらず水田が少なかったのである。
その意味から、富士川は表日本にあるのであるが、甲府盆地という広い盆地を持っているために、水温が高かった。釜無川は韮崎付近までは冷たいまま流れてくるが、盆地へ出ると急に水が温んでしまう。笛吹川も、雁坂の峠の東を出て日下部付近までは冷たいが、石和へくると段々湯のようである。そして富士川は、鰍沢を出て再び峡谷に入るのであるが、流れは温かのままである。
那珂川もそうである。栃木県の塩谷、那須、芳賀の三郡に拓けた耕地から、広く浅く陽を受けた温かい水が絶えず注いでいては、他の川のように、いつまでも冷たい水温を保っていられないのは当然である。長倉の峡を下って茨城県へ入れば、一層水温が高くなるといっていい。
この二川は、表日本の異例であろうか。
黒部川は、裏日本の特例である。断層によってできた飛騨山脈の割れ目を、北へ流れる黒部川は雪が深いうえに、陽当たりの悪い川である。屈曲が多く谷が深い。そして水面を掩う樹葉は敷き詰めたようである。流域の耕地は、まことに少ないのである。