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みずとほね
水と骨
佐藤 垢石
「釣趣戯書」三省堂、1942(昭和17)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,477 字 · 11 页
水温の低い所以である。
興津川は、鮎の棲む川として、太平洋へ注ぐもののうち最も流程の短い一つである。この川の流域も耕地が少ないのである。それに小さい川にも拘わらず、大河に似た相を持っていて崖が高く屈曲が多い。あのくらいの長さの川では、水温が高い上に、水質が悪く到底鮎など棲み得られるものではないが、この川は水温が比較的低いので、立派な鮎が数多く育つ。
雪との関係こそないが、そして川の大小の差こそあるが、越中の黒部川と裏と表の好一対である。
二
くだらない水温のことを、なぜ長々と書いたか。
私は、水温と魚の質、殊に味との関係に深い興味を持っているからである。
鮎は、水温の高い川に好んで棲む魚である。静岡の安倍川や、小田原の酒匂川は、六月過ぎて水を水田へ引き上げる頃になると、川は枯れて水温は非常に高くなる。二十五度を超えて、三十度近くにもなることがある。三十度近くなると、もう日向水と同じな温さを持ってくるのである。鮎でも、鮒でも入れればすぐ死にそうな、こうした温かい川で鮎は盛んに水垢を食っている。時には、思いもよらない浅い場所で、友釣りに掛かることがある。