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みずのしたのいし

水の下の石

山本 周五郎

「新武道」1944(昭和19)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,791 字 · 28 页

青空文庫

二

二

小弥太は二人の去る足音を聞きすましてから、しずかにふり返った、諜者だという人物はひき据えられたかたちのまま、膝をつき頭を垂れて、わなわなと震えていた、「……立て」そう云ったが動かなかった、小弥太は肩を掴んでひき立てた、ふんわりと柔らかい肉付で、濡れた肌から、熟れた果実のようなあまい躰臭が匂ってきた、「おまえ女か」「お助け下さい」女は再びそこへ膝をついてしまい、縋りつくような、けんめいな口ぶりで云った、「わたくしはこの向うの平沼村の者でございます、源助という百姓のむすめで初と申します、決して怪しい者ではございません、どうかおたすけ下さいまし」「こんな時刻にどうしてこんな場所をうろうろしていたのだ」「母の持病が起ったものですから、原までお医者を迎えにまいるところでございます」「……こんなに更けているのに若いむすめ一人でか」「はい、もう去年からのことで馴れていますし、ほかに頼む人もいませんので……」むすめたちは或るとし頃になるとその言葉つきや声に、隠れている性質をそのままあらわすことがあるものだ、初というむす