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こおりぐらのにかい

氷蔵の二階

宮本 百合子

「女性」1926(大正15)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,201 字 · 37 页

青空文庫

下に、赤いポストがあるのも愛らしい。房は、好物な苺のジャムをつけてパンを食べ、牛乳を飲んだ。飽きずに雨の音を聴いた。降る雨は一様でも、雫る場所によって音が違う。――

昼から房は下へ降りた。上って来ると、隣の芦沢の室の戸が珍らしく開いていた。廊下――房がその前を通って自分の室に行かなければならない――方へ、瑞々した丸髷を向け、派手な装の女が草履の鼻緒をなおしている。房が傍へ来ると、女は自然に頭を擡げた。

「いいおしめりですことね」

すらりとした調子であった。房は、顔を赧らめた。

「ほんとにね」

女は、はたはた前掛をはたいて立ち上った。

「ちっと寄って話していらっしゃいな、いいでしょう、今誰もいないんですよ」

気持よい女なので寧ろ意外であった。室は八畳で、安ものながら箪笥や長火鉢や、すっかり世帯道具が揃っていた。座布団も鏡かけもぱっとしたメリンスずくめであった。

「――あなたがいらしたってことは、下のお神さんにきいてたんですよ……いかが? お気に入りましたか」

房は、黙って笑った。

「――あなたんとこ、よくこんな綺麗にしていらっしゃること」

女は、嬉しそうに、