轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

こおりぐらのにかい

氷蔵の二階

宮本 百合子

「女性」1926(大正15)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,201 字 · 37 页

青空文庫

房は、窓じきり越しに露台の台所に。暫く森(しん)とした。塵埃のレースを張った硝子の方から、夕暮のどよめきが聞えた。若葉のつきかけた街路樹の梢と、まだ光の薄い広告燈の煌も見える。

「ね、一寸お志野さん、こんなものどこへ捨てるの」

志野は、急に夢でも醒されたような声で訊きかえした。

「え?」

「ごみすてはどこなの」

「そやっといて頂戴、夜んなったら下へ持ってくから……」

彼女の顔を見ず、言葉つきだけかげで聴くと、房は、疲れが分って気の毒な心持になった。志野は、電話局の事務員であった。

仕度が出来ると、房は一閑張の机を電燈の下へ持ち出した。

「――すっかり本式なのね」

「だって――じゃあどうしてたの? 今迄――」

「面倒くさいからここんところですましちゃうのよ」

「今夜は、もっと本式よ」

房は、悪戯(いたずら)らしくにこにこしながら、わざと隠して置いたアネモネの花を運んで来た。

「どう? わるくないでしょ? これをここんところに飾ってさ」

彼女は、卓子の横に赤いアネモネをさした硝子花瓶を置くと、直ぐとってかえして、両手に西洋皿を持って入って来た。

「これを、こうっと、ね?」