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さばくのこと
沙漠の古都
国枝 史郎
「新趣味」博文館 、1923(大正12)年3月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 110,076 字 · 220 页
そして再び欧羅巴などの虚飾に充ちた社会生活へは帰って行くまいと決心した。
彼は鳥獣を愛しみ鰐魚をさえも手なずけた。彼には鳥獣の啼き声やあるいはその眼の働きやもしくは肢体の蜒らし方によってその感情を知ることが出来た。そして彼らが何を要求し何を嫌うかを察することが出来た。で彼は彼らの要求する事を飽きもせずに彼らにしてやった。その代り彼らも彼のためにいろいろの用事を足してやった。
三十六
ある天気のよい日であったが、彼はその時小屋を出て小丘の上に坐っていた。
突然前方の森林の中から鳥獣の悲鳴が聞こえたが、それと一緒に藪地を分けて虎が一匹走り出した。その虎の跡を追っかけて同じ藪地から出て来たのは――思いもよらない有尾人猿で、それと知った彼の驚きは形容することも出来なかった。彼はやにわに飛び上がり、その人猿に向かって行った。鋭い咆哮! 烈しい叱※(「口+它」、第3水準1-14-88)! ……さしもの人猿もジョンソンのために胸を蹴られて転がった。
こういう出来事があってから数日経過したある日のこと、いつも小屋にいたジョンソンの姿がどこへ行ったものか見えなくなった。