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さばくのこと

沙漠の古都

国枝 史郎

「新趣味」博文館 、1923(大正12)年3月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 110,076 字 · 220 页

青空文庫

「府庁へ行く道の中央で。……いや飛んでもない怪獣だ」

「レザール君、見るがいい。これが怪物の正体よ」

ラシイヌはレザールを押しやった。

自動車の中には東洋犬の毛皮を冠った人間が、昏々として眠っていた。

レザールはその顔を見詰めたが、

「こりゃ園長のエチガライだ!」

「すなわち怪獣の正体さ――よろしい、諸君、では怪獣を病院へかまわず運んでくれたまえ」

自動車は再び爆音をたて、街路を辷るように走り去った。

「行こう、レザール、じゃさようなら……明日君の家を訪問しよう。その時君の話しを聞こう。今夜は眠いから失敬する」

ラシイヌはクルリと体を向け、横町へズンズンはいって行った。

五

その翌日のことである、ラシイヌとレザールと美術家とが、レザールの室で落ち合った。やっぱり麗かな春の陽が、南欧桜の香と一緒に室の中へいっぱいに射していた。

「……夫人の話を聞いているうちに、動物園長のエチガライが、疑わしいと思いましたので……」

レザールはいくらか恥ずかしそうな、思い違いを恥じるような、感激の伴なわないぼやけた声で、自分の解釈を一通り、ラシイヌに説明するのであった。