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さばくのこと

沙漠の古都

国枝 史郎

「新趣味」博文館 、1923(大正12)年3月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 110,076 字 · 220 页

青空文庫

何んの私が恐れるものか、先方でこっちを恐れるがいい。

卿ら、探険隊の諸君達! 卿らの守っている運命の球を出来るだけ大切にするがいい。隙を見てその球を奪おうとする支那の青年がいるのだから。料理人として卿らが雇い入れた張という支那の青年に眼を離さない方がよいだろうと敢て僕は諸君に警告する……

――孔雀の啼き声が聞こえて来る。鸚鵡の啼き声が聞こえて来る。冬薔薇の匂いが匂って来る。陽の落ちた後の夕空を夕映えが赤く染めている。明日は恐らく天気だろう。この食堂ともおさらばだ。そろそろ料理人部屋へ帰って行って荷造りの真似でもやることにしよう。

明日は沙漠へ向かうのだ。沙漠が私を呼んでいる……(備忘録下略)

七

「あの女を君はどう思うね?」

ラシイヌは小声で囁いた。

「前から気がついてはいましたが、土耳古型の素晴らしい美人ですね――あれをモデルにして描きたいものだ」

「描かざる画家」のダンチョンはこれも小声で囁いた。ラシイヌはちょっと舌打ちをしたが、ニヤリと苦笑したものである。

「君の描きたいねも久しいものだ。描きたい描きたいというばかりで何一つ君は描かないじゃないか。