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さばくのこと
沙漠の古都
国枝 史郎
「新趣味」博文館 、1923(大正12)年3月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 110,076 字 · 220 页
ラシイヌはいくらか不安になった。というのは一行の守り本尊の水晶の球を密封した鉄の手箱をそのレザールが体に着けているからである。
ラシイヌは席から立ち上がった。しかしその時連結されている隣りの客車の扉があいて、レザールがそこから現われたのでラシイヌは安心して腰かけた。
レザールは何故か眉をひそめラシイヌの側へやって来たが、耳へ口をつけると囁いた。
「あなたは料理人をどう思います? あの張という支那人を?」
「変ったことでもあるのかね?」ラシイヌは不思議そうに訊き返した。
「地図を持っているのですよ」
「地図※(感嘆符疑問符、1-8-78)」とラシイヌは眼を見張った。その眼でレザールを見守って、「もっと詳細く話したまえ」
「今……」とレザールは話し出した。「オムスクへ着くのも間もないので一応道具類を見て置こうと三等の客車へはいって行きますと、監視を命じておいたあの張が道具の積み重ねを前にして熱心に何かを見ているのです。近寄って肩越しに見るとですね。西域の地図じゃありませんか。『張!』と私が声をかけるとバネ仕掛けのように飛び上がって地図を懐中へ隠しました。『地図を見せろ!』