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さばくのこと

沙漠の古都

国枝 史郎

「新趣味」博文館 、1923(大正12)年3月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 110,076 字 · 220 页

青空文庫

と嚇してもどうしても見せようとしないのです。『何んのために地図を持ってるか?』とかまわず詰問しましたところ、『幸いに縁あって皆様の探険隊の一員となって西域に向かうことが出来る以上は極力私も骨を折って皆様のお手伝いが致したいと思い西域の地図を求めました』とこういう彼の云い草です。『どこでその地図を手に入れたか?』尚も私が尋ねますと、『西域は支那の領地ですし私は支那人の事ですから地図などは容易に手に入ります』と何んでもないように云うのです。なるほど理窟にはかなっていますが、それほど理窟にかなっているなら尚の事地図を見せればよいのにどうしても見せようとしないのです」レザールはちょっと云い淀んだが、「こんな具合であの支那人は胡乱な人間だと思いますので、いっそ思い切ってオムスク辺で解雇いたしたらいかがでしょう?」

「解雇するのもよかろうが旨い料理が食えなくなるね」ラシイヌはニヤニヤ笑いながら、「ところで張のその地図と僕らの持っている西域の地図とは全く同一のものだろうかね?」

「私は瞥見しただけで正確のところは云われませんが同一のものらしく見えました」

「僕らの持っている西域の地図はヘジン博士の著わした実地踏査の写生地図で他に類例のないものだがそれを持ってるというからには料理人は確かに怪しいね。