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さばくのこと
沙漠の古都
国枝 史郎
「新趣味」博文館 、1923(大正12)年3月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 110,076 字 · 220 页
「こいつが使命だって云うんだな。つまり人殺しの使命だな。そんな事だろうと思っていた」
「殺人の使命と云うよりも、決闘の使命と云った方が、紳士らしくてよさそうだね」
眼に見えぬ男の言葉である。同じ言葉がまた云った。
「張教仁君、二振りのうち、君の好いた方を取りたまえ。残ったのを僕の武器としよう。そして二人で自動車の中で、切り合おうじゃあるまいか」
「理由の知れない決闘を、僕はしようとは思わないよ」張教仁は云い放した。
「がしかしそいつは不可能だ!」相手の男は威圧した。
「僕は使命に従って、君と決闘せにゃならぬ」
「君は使命に従って、それじゃ僕を殺したまえ。そうして君の親玉に、決闘して殺したと云いたまえ。僕はこうして坐っているから、その短刀で斬るがいい。理由の知れない決闘は、僕は断じてやらないからね」
張教仁の言葉には断乎たる決心が見えていた。その決心に押されたのか、相手の男も沈黙した。車内は寂然と物凄い。物凄い車内に二人を乗せて巨大な自動車は、深夜の道をどこまでもどこまでも走って行く。
十四
その時、眼に見えぬ男の声が、慇懃な調子で云い出した。
「張教仁君、さようなら、君の決心は見えました。