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さばくのびき

沙漠の美姫

国枝 史郎

「サンデー毎日」1928(昭和3)年4月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,658 字 · 14 页

青空文庫

呼韓邪単于の大幕屋を巡って、無数の部下の無数の幕屋が篝火の光を出入口から放して、伍を作って並んでいた。

そういう幕屋を見守りながら、絶えずあるいている警衛の兵士の手に持っている槍の穂先が、幕屋の出入口から射して来る光に、銀桃色に輝いてみえた。

離れたところに厩舎があったがそこからは馬の地を蹴る音と、それを叱咤する兵士の声とが、のべつに荒々しく聞えて来た。

松火の見えている沙丘の前面から、鋭い胡笛の音が響いて来た。歩哨の兵が吹いたのでもあろう。と、そこから閧の声が起こった。すると幕屋から兵士や将校が、一度に吐かれたように現れたが、閧の声のした方を眺めやった。

が、閧の声は直にやんで、伝騎が一騎走って来た。そうして何か叫んだようであった。

「何でもないのだ。小競合だ!」

こう伝騎は叫んだようであった。

と、笑声が反響を起こして、そうしてそれが平沙に吸われて、反動的に寂れ返った時に、琵琶の音が一筋流れて来た。

呼韓邪単于の大幕屋の中で、王昭君が弾じ出したのであろう。

「いいな」

と私は心から思った。

私は背広のボタンを締めて――いくらか夜寒になったので――肩を円くしてブラブラとあるいた。