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かわはぜ
河沙魚
林 芙美子
「人間」1947(昭和22)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,653 字 · 24 页
そのくせ、河明りの反射が、まるで秋のようにさえざえしていた。
「どの位、金をつけりゃいいのだえ?」
与平が引っこんだ眼をぎょろりと光らせた。さて、いくらつけたらよいかと問われて、千穂子は、このごろの物価高の相場を吊りあわせる金銭の高が云えなかった。こうした不幸な子供の貰い手には、金が目当てで、筋のよい子なら、一万円もつけるのもあるだろうけれど、普通に云っても、千円や、二千円はつけなければならないのだ。
「新聞に出してもらったか?」
「ええ、一度出してもらったンですけど、てんからないンですよ。虫眼鏡でみるような広告が、新しい新聞で八拾円なンですものね」
千穂子は心のうちで、もう一度、伊藤さんに頼んでみようと思った。心は焦りながら、そのくせ、一日しのぎで、千穂子は上の男の子達よりも不憫がまして来ているのである。貰われてゆけばすぐ死にそうな気がした。自分の勝手さだけで、子供をなくしたくない執着が強くなり、今朝、産院を出て来たばかりだのに、さっきから、赤ん坊の事が気にかかって仕方がないのだ。千穂子のもう一つの考えの中では、姉に打ちあけて、姉の子供にしてもらいたかった。