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かわはぜ

河沙魚

林 芙美子

「人間」1947(昭和22)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,653 字 · 24 页

青空文庫

寝ぞう悪いンだなあ……」と笑った。四ツになる光吉も片言で、「おじいちゃん、怖い夢みたのかい?」と聞いている。千穂子は子供の前に赧くなった。与平はぷつっとして子供からそっぽを向いた。――与平も苦しまないはずはないのだ。毎晩、どんな工面をしても酒を飲むようになっていた。だけど、酒を飲むと人が変ったように与平は感傷的になり、だらしなくなっていた。酒に酔って帰った与平に対して、千穂子が怒ってぷりぷりしていると、頻りに頭をこすりつけてあやまるのだ。深酒をした夜など与平の気持ちは乱れて、かっと眼を開いているまつの前でも与平は千穂子に泣くようにしてあやまるのである。与平にとっては、嫁の千穂子が不憫で可愛くて仕方がないのであった。隆吉に別れている淋しさが、千穂子との間にだけは、自分の淋しさと同じように通じあった。千穂子も淋しくて仕方がないのだと、まるで、自分の娘を可愛がるようなしぐさで、千穂子の背中をさすり、子守唄を歌って慰めてやりたくなるのである。その可愛さがだんだん太々しくなり、しまいには食い殺してしまいたい気持ちになるのも酒の沙汰だけとは云えないのだ……。