轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ぬまのほとり

沼のほとり

豊島 与志雄

――近代説話――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,788 字 · 16 页

青空文庫

それから、花柳界の閉鎖や、高次の召集など、戦争の渦中に彼等も巻きこまれました。高次は出発に際して、かねてから二人の間のひそかな同情者たる姉の清子に、二葉の写真を預けましたきりで、彼女の生活や居所については何にも明かしませんでした。――それらの事件の間中、彼女の名前は、歌沢の方の名取たる寅香とばかり呼ばれる習わしになっておりました。

八重子は長く写真を見つめておりましたが、溜息のように言いました。

「このひとが、あの、沼のほとりのひとですよ。」

「まあ……夢の中のようなお話の、あのひと……。」

二人は顔を見合せました。

「高次さんの戦死のこと、知ってますかしら。」と清子は言いました。

「訪ねてみましょう。」と八重子は言いました。

そして数日後、二人はひそかに打ち合せて、二人だけの秘密を胸に懐いてる思いに軽く昂奮して、出かけました。

秋晴れのよいお天気で、冷かな微風も却って快く思われました。

八重子はわざわざ、あの時と同じ服装をしていました。清子はなるべく目立たぬ服装をしていました。

駅から街道沿いの町筋、そこまではよく分りましたが、その先が、八重子の記憶にはすっかりぼやけていました。