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あさまふんかこう

浅間噴火口

豊島 与志雄

「文芸春秋」1938(昭和13)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,938 字 · 24 页

青空文庫

」

「それでも、昼間降ったでしょう。」

正枝は微笑しかけたが、それを無理に押しころした。

「そんなに雪が好きなら、犬にでもなりなさい。犬みたいに酔っ払ってさ。」

云ってしまってから、正枝は自分で困ったように、不機嫌に口を噤んだ。また微笑が浮びそうだったのである。だがその可笑しさは、李には通じないらしかった。

「そうです。でも、おばさんもひどいです。表を開けてくれないから、犬のように外で寝て、すっかり風邪をひきました。八度二分熱が出ました。」

正枝はまだ黙っていたが、ふいに云い出した。

「外套はどうしたんです。」

李は腑に落ちないような顔をあげた。

「外套を、どうしてあんなところに懸けたんですか。」

李は返事もせず、何か考えてるようだった。正枝はそれに押っ被せて、外套のことを責めたて、春日荘にけちをつけるつもりかとまで云った。

「あゝ分った。」と李は頭を叩いた。「夢をみました。おばさんから閉めだされて、悲しくて悲しくて、泣いてるうちに、死んでしまいたくなり、玄関にぶら下った夢をみました。それだったんでしょう。」

「何がそれです。」

「そういう夢をみたのを、覚えています。