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あさまふんかこう
浅間噴火口
豊島 与志雄
「文芸春秋」1938(昭和13)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,938 字 · 24 页
「とにかく、もう少し様子を探ってみましょう。」と江原は結論した。
江原が帰ってから、正枝は暫く思案した後、此度は一人で再び李の室に行ってみた。そして机の抽出をあけてみたり押入の中を覗いてみたりしたが、どこもきちんと片付いていて、何かの手掛りになるような書き物の断片さえもなかった。そのうち、正枝は突然顔を赧らめ、急いで室から出た。
三
翌朝、正枝は昨夜よく眠れなかったに拘らず、へんに早く眼をさました。起き上ると、すぐにキヨがとんできた。
「奥さま、李さんが帰りました。」
「え、李さんが……。いつ?」
まだ六時前、キヨまでそれで起されたのだった。李はいつもの調子で、のんきに帰ってきて、顔を洗い、身体中水でふいて、それから、今朝だけ御飯をたべさせてくれと頼み、新聞を読みながら待っていると云って、室に上っていったそうである。
正枝は何かしら慌てた。急いで顔を洗い髪をなでつけ、室の掃除がすむとすぐ、李を呼びにやった。
李は単衣に着かえていて、笑いながらやって来た。
「ずいぶん寝坊ですね。」
正枝は黙って李の顔を見た。微笑の光が眼に浮び、喜色が額や頬にあった。