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うかぶひこうとう

浮かぶ飛行島

海野 十三

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页

青空文庫

すっかり気を奪われたのであろう。ピストルの銃口だけは、川上機関大尉の方に向いているが、引金にあたっている指にはもう力がはいっていない。

気が臆したフランク分隊長は、こうなればもう銅像みたいなものだった。

「はい、二十五ノット、よろしい。エンジンはいずれも快調です。異常変動、全くみとめられず!」

川上機関大尉の声は、いよいよ冴えた。

その声がフランク大尉の鼓膜をうつと、彼は反射的にピストルの引金をぎゅっと握りしめた。

(十オ!)

その瞬間、

「あっ、分隊長! な、なにをなさるんです」

フランク分隊長の話

左手の通路から、おどりこんできたのは、ケント兵曹だった。

「あっ、あぶない」

と叫ぶのも口のうち、彼はフランク大尉と川上機関大尉との間に、すばやく立ちふさがった。

「おい、退け。なにをするんだ」

「フランク大尉、あなたこそ、何をなさるんです」

「ケント兵曹。のかんか!」

「お待ち下さい。――まちがいがあってはなりません」

「なに、まちがい? 何のまちがいだ」

「ああ、御存じないのですか。いまわが飛行島は試運転中で、それにつきまして、リット少将閣下は、わが機関部が最善の成績を上げるようにと訓令せられました」