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うかぶひこうとう

浮かぶ飛行島

海野 十三

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页

青空文庫

そのとき大尉が思い出したのは、川上機関大尉の部屋をしらべてみるということだった。

彼はすぐさま、その足で川上機関大尉私室へいってみた。

すると、その私室の前には、四五名の兵員が声高になにか論争していた。

彼等は長谷部大尉の姿を見ると、ぴたりと口を閉じて、一せいに敬礼をした。

「お前たちは、何を騒いどるのか」

すると兵の一人が、

「はっ、私は不思議なることを発見いたしました。川上機関大尉の衣服箱を検査しましたところ、軍帽も服も靴も、すべて員数が揃っております。つまり服装は全部ここに揃っているのであります。機関大尉は素裸でいられるように思われます」

「なに、服装は全部揃っているって。なるほど、それでは裸でいなければならぬ勘定になるが、しかし川上機関大尉は軍服を着て舷門から出ていったんだぞ。それは杉田二等水兵が知っとる」

「おかしくはありますが、本当に揃っているのでありまして、不思議というほかないのであります」

兵は自説をくりかえした。

そうなると、長谷部大尉も、ふーむとうならないわけにゆかなかった。一たいどうしたというのだろう。浮かぶ飛行島をめぐる怪事件の幕は、こうして切って落された。