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うかぶひこうとう
浮かぶ飛行島
海野 十三
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页
ところが、島内をしらべてゆくと、なかなかそんな生やさしいものではない。いかに勇敢無比なわが海軍の精鋭をもってしても、これは相当の犠牲を出さないでは攻めおとすことができないと分かった。なにしろ二十インチの巨砲である。ものすごい高角砲である。べらぼうに厚い甲板の装甲である。恐しく用心をした二重三重の魚雷防禦網である。これでは何をもっていっても、ちょっと歯がたたないように思われる。なるほど、大英帝国が莫大な費用と全科学力とをかたむけて造っただけの大飛行島である。
難攻不落の浮城だ。
「これは帝国海軍にとって実に由々しきことだ」
川上機関大尉は、ひそかに天を仰いで長大息したのであった。
その上に、気にかかるのは、彼の秘蔵していたペンキ缶に仕かけてある短波無電器がなくなって、今は祖国日本へこの重大な心配を通信するみちがなくなったことである。現に、試運転の夜、ホ型十三号潜水艦が飛行島に近づいて、川上機関大尉あてに、いくたびも呼出信号をかけたが、ついに大尉の応答が得られなくて、艦隊本部へ向け、
「川上機関大尉の応答なし」
の無電をうたせたほどだった。
とにかくわが勇士川上機関大尉は、そこで一大決心をかためたのであった。